解説・コラム記事一覧

PLAニート樹脂は、主に分子量とL体/D体比率によりグレード分けされています。この2つで大まかな特性が決まり、さらに添加剤の配合によってより細かな味付けがされている形が多いようです。分子量はどの熱可塑性樹脂にも出てくるのですが、L体/D体比率は他の樹脂にはあまり出てこない概念ですので簡単に整理してみたいと思います。PLAのL体とD体とはPLAの原料である乳酸は炭素原子にそれぞれ異なる分子を持ってい...

ガラス転移点とは?一般的に、液体を冷却すると安定な状態をとろうとして結晶をつくります。しかし様々な要因により凝固点を過ぎても結晶化が始まらないことがあります。さらに冷却されつづけると粘度が急激に増加し、ついには液体状態のまま、分子の運動が凍結された状態で固体になります。これが液体のガラス転移といわれる現象です。この液体状態のままで固まった固体は、アモルファス固体、過冷却液体などと言われます。みかけ...

フィラメントが吸水すると糸引き、ボソボソ、強度低下、定着不良、ノズル詰まりなど不具合が起きやすくなります。条件を合わせても造形が毎回安定せず、フィラメントの状態にはずいぶん悩まされている方も多いと思います。吸水の問題は、基本はフィラメントを乾燥させれば解決しますが、手軽に使えるのが3Dプリンタの良さでもあり、毎回3Dプリンタ使用前に長時間乾燥をかけておくのもなかなか難しいこともあるかと思います。で...

そもそも樹脂の結晶って何?樹脂は分子がとても長くつながった高分子の鎖でできています。内部構造を見ると、分子の集まり方が密な部分と疎な部分があります。おおざっぱに言うと、密な部分が結晶、疎な部分が非結晶です。結晶部分は分子が折りたたまれる構造になっていて、規則的に分子が配列しているので密度が高くなっています。非結晶部分は分子がだらっと伸びているだけで寄り集まっているわけではないので、密度は高くありま...

PLAはあまり一般的にはなじみがない樹脂ですが、なぜ3Dプリンタでは広く使われるのでしょうか。世の中にはたくさんの種類の樹脂がありますが、その中でもPLAがよく用いられる理由は、大きくは以下の3点になるかと思います。収縮率が小さいPLAは液体から固体になる際の収縮率(成形収縮率)がとても小さい素材です。そのため造形精度が高く、元の3Dデータに近い造形品を作りやすいことがあげられます。FDM式の3D...

PLA樹脂開発の歴史PLAは実用化されてからまだ20年ほどで、歴史の浅い樹脂です。PLAは1930年代から研究開発が進められてきました。当時のPLAはまだ実用からは遠く、通常の室温環境下でも加水分解が進行してしまうほど不安定なものでした。ポリマー自体がわずか数カ月の寿命しかなかったため、製品を作ってもすぐボロボロになってしまい、とてもプラスチックとして成り立つレベルではありませんでした。PLAは昔...

ABSはスチレン系樹脂で、ポリスチレンの仲間です。古くからある樹脂で、日本では石油化学コンビナートが作られた時期の昭和38年に商業生産が始まっています。アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンの頭文字をとって名前が付けられました。もともとポリスチレン(PS)という樹脂があり、ABSはこのPSの欠点を改善していく中で生まれました。PSの耐熱性を改善するためにアクリロニトリルを共重合したのがAS樹脂(ア...

プラスチック製品の裏側に耐熱○○℃という表示をみることがあります。この耐熱温度というのは何なのでしょうか。何をもって決められていて、耐熱温度を超えるとどうなるのでしょうか?実はプラスチックの耐熱温度に対する定義はありません。用途や樹脂の種類によって変わってくるため、一義的に決めることができないためです。プラスチック製品耐熱温度表示の例たとえばポリプロピレン食器の場合でも、A社の説明では「ポリプロピ...

PLAは生分解性プラスチックとして紹介されています。生分解という言葉を聞くと、自然環境で分解されていくことを思い浮かべますが、実は必ずしもそうではありません。PLAの分解は加水分解と微生物分解の2段階に分かれて進みます。1段階目は加水分解です。短期間に加水分解を起こすには温度55℃以上、湿度80%以上の環境が必要になります。堆肥を作るときのコンポスト装置だと発酵での発熱があり、水分も含まれるためこ...

溶剤で3Dプリント造形品を表面処理して積層痕をスムージングしたり、ノズルの詰まりを除去したりといったことが行われています。ABSの場合はアセトンが使えるのですが、PLAの場合はなかなかいい溶剤がありません。PLAを溶かす溶剤としてはジクロロメタン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)などがありますが、いずれも危険性が高い溶剤です。個人でも入手可能なため、ジクロロメタンでPL...

3Dプリンタ用フィラメントの重さ、長さ換算ツールです。2つの換算ができます。①フィラメント重さを計算材量の比重、フィラメント径、フィラメント長さを入力②フィラメント長さを計算材量の比重、フィラメント径、フィラメント重さを入力数値を入力して「計算」ボタンを押してください。①フィラメント重さを計算比重 PLAは1.25、ABSは1.03(*)フィラメント径 mmフィラメント長さ mフィラメント重さ ...

FDMの3Dプリンタを動かしていてこんな感じにフィラメントの樹脂がもれたことはないでしょうか?ホットエンドでフィラメント樹脂がもれる理由を考えてみたいと思います。理由1 : ヒートブロックのゆるみ、組み立て不良単純ですが、ヒートブロックがどこかで緩んでいる可能性があります。十分締め付けていたつもりでも、プリント中の動きや振動、段差に乗り上げたときなどの衝撃などでしだいに緩んでくることが考えられます...

加水分解は文字通り水が加わってポリマーが分解していく現象です。PLAは加水分解するといわれますが、具体的に加水分解を起こすと3Dプリンタではどんなことが起こるか考えてみたいと思います。PLA樹脂は、まず植物から得られた糖質を微生物発酵によって乳酸に変換し、環状二量体であるラクチドを作ります。ラクチドをさらに開環重合することによって製造されています。加水分解ではこれと逆のことが起きます。PLAは水分...

3Dプリンタの造形途中でフィラメントの色を変えたい場合があります。いくつかやり方がありますが、G-CODEを使って自動でポーズさせ、止まっている間にフィラメントを交換する方法があります。Simplify3Dで、Edit Process SettingsにあるScriptsタグの下、Additional terminal for post processingのところに以下を入力します。スクリプトは...

樹脂の押出では生産性の向上、低コスト化を実現するために速い速度で押出して加工する必要があるのですが、溶融粘度が高い樹脂の場合は生産速度を上げると押出品の表面に肌荒れが発生することがあります。この現象は重度だとメルトフラクチャ、軽度だとシャークスキンと呼ばれています。メルトフラクチャやシャークスキンが発生すると、製品機能や外観を大きく損ねるため不良品となってしまいます。やっかいで大変嫌われる現象です...

PLA(ポリ乳酸)樹脂メーカー大手さんの情報です。PLAコンパウンドメーカーさんは除いています。NatureWorks LLC(ネイチャーワークス LLC)URLhttps://www.natureworksllc.com/ブランド名Ingeo拠点アメリカ前身はカーギルダウ。1997年に穀物大手カーギルと化学大手ダウ・ケミカルが100%バイオ由来原料を用いたポリマー生産を目的に設立したが、コスト面...

原料樹脂(ナチュラル樹脂)に顔料、添加剤、他の樹脂などを混ぜ合わせ、新しい外観、物性、機能を持つ樹脂に加工することを「コンパウンド」と言います。世の中には多くのプラスチック製品がありますが、樹脂原料をそのまま成形品にしていることはあまりありません。例えば自動車のバンパーに使われるポリプロピレンは、そのままだと柔らかくて使えませんが、炭酸カルシウムを混ぜ合わせることで硬さが増します。家電製品やAV機...

PLA樹脂は環境意識の高まりから、世界的に見ても年々需要が増えています。PLA樹脂はフィラメント用としては一般的ですが、他にどんなところに使われているのでしょうか。最も多くPLAが使われている用途はフィルムやシートの分野です。食品などの包装フィルム、包装容器として使われています。PLAは酸素などのガス透過性、水蒸気の透湿性があります。この性質を活かして、野菜・果物などの包装材や容器、惣菜パック、弁...

そもそもPETってどんな樹脂?PET(ポリエチレンテレフタレート)はエチレングリコール(EG)とテレフタル酸(TPA)を重縮合して得られる熱可塑性ポリエステルです。透明性・靭性・剛性・耐熱性などに優れています。PETボトルでおなじみの樹脂です。PETは結晶化速度が遅いため、当初は成形材料としての普及が遅れました。材としての易結晶化グレードの開発と、プロセスがキーになる延伸技術両方が確立したことで結...

FDM式の3Dプリンタは一般的なPLAやABSなどを用いると強度が不足する、耐熱性が低いなどの問題があるため、用途が限定されやすいといわれています。これらの欠点を補なうものの一つが繊維強化プラスチックです。ガラス繊維、炭素繊維などの補強効果で機械的特性、耐熱性を高めることができるため、3Dプリンタの適用範囲を広げることができます。3Dプリンタを繊維強化プラスチックに対応させることで高強度部品を自分...

近年マイクロプラスチック問題などに端を発する環境への意識の高まりがあり、使い捨てとなる石油系プラスチック代替品に対する需要が世界的に急増しています。バイオベースであるPLA樹脂が代替品の1つになりうると考えられており、商品の包装容器などへの採用が進んでいます。これは好ましいことではありますが、残念ながら供給が急増する需要に追いついていません。特に2019年夏ごろからPLA樹脂の世界的な需要が急激に...

樹脂のデータシートを見ていると、射出用、押出用と書いてあることがあります。これらの違いは何なのでしょうか。例えば押出用の樹脂を射出成型で使うとどうなるのでしょうか。ポリマーは多くのモノマーがつながってできている高分子です。ポリマーの分子量はモノマーがつながっている数が増えるほど大きくなり、分子量が大きくなるほど高分子の鎖の絡み合いが多くなります。ひもが無数にあって、これを引っ張って動かそうとする様...

一般にPLA樹脂は成形での扱いが難しいと言われていますが、これは成形加工だけでなく、実は前準備など取り扱いにおいても同様です。PLA樹脂は大気から水分を容易に吸収します。気温にも非常に敏感です。他の樹脂よりも乾燥、保管、搬送などには特別に気を付ける必要があります。PLA樹脂原料の取り扱い、乾燥について原料メーカーが提示する特性に近い成形品を得るには、PLAが周囲の乾燥されていない空気に触れることを...

Direct vs Bowden extrusion. Source: 3dprinting.comフィラメントを使うFDM式の3Dプリンタはダイレクト式、ボーデン式に分類されます。どちらも加熱したホットエンドにフィラメントを押し込んで吐出するというのは同じです。一見どちらでも同じように見えますが、大きく違いがあります。最近は3Dプリンタが普及してかなり安価な機種も数多く出てきました。何を選ぼうか...

プラスチック製品強度を上げるために、よく射出成型ではガラス繊維を添加した樹脂が使用されています。3Dプリンタでもカーボンファイバーを充填したフィラメントが使われるようになってきました。カーボンファイバーを添加すると、一般的に引張強度、曲げ弾性率が上がります。このように特性改善を目的として樹脂に添加される固形分はフィラーと呼ばれます。フィラーは強度を上げる以外にも様々な目的で使用されます。3Dプリン...

3Dプリンタにおいてノズル詰まりは大敵です。造形初期ならやり直しができますが、長時間造形の途中で詰まってしまうといくら途中の出来が良くても台無しになってしまいます。何としても造形においては避けたい症状です。ノズル詰まりは様々な要因で発生しますが、フィラメントから考えられるメカニズムを3つ上げてみます。ノズル詰まり メカニズムその1 : 滞留樹脂の炭化FDM式の3Dプリンタはフィラメントを押し込んだ...

樹脂ペレットはプラスチックの成形(射出成型など)で使われる原料です。樹脂と特性を改善するためのさまざまな添加剤を溶融して練り合わせたもので、粒のような形をしています。ほとんどの成型機はスクリューで樹脂を送り込みます。もし形が粒状でなく、粉のような細かい形状だとスクリューにまとわりついてしまい、うまく送り出すことができません。かといって形状が大きすぎると、こちらもスクリューやバレルにうまく食い込んで...

PLAは生分解性樹脂としてエコなイメージがありますが、実際にどのように分解していくのかはあまり知られていません。PLA分解のメカニズムについて整理してみたいと思います。PLAの生分解はどうやって起きる?https://www.tappi.org/content/enewsletters/eplace/2007/06PLA06.pdf説明はNature3Dが日本語で記載上はPLA分解がどのように進む...

3Dプリンタが低価格になったことで急速に普及し、消費者向けとしても広く使われるようになってきました。それと同時に、造形中に溶融樹脂から発生する有害物質についての影響も懸念されるようになってきています。Szymon Wojtyłaらは、Is 3D printing safe? Analysis of the thermal treatment of thermoplastics: ABS, PLA,...

FDM式の3Dプリンタで得られた造形品のアニール処理が行われることがあります。アニール前後の強度のデータを取って比較しているサイトもありますが、造形品の形状や造形条件によって大きく影響を受けることがあるためか、アニールによる変化がデータにあらわれず、何が変わったかを必ずしもうまく説明できていないことがあるようです。この記事ではアニールによって樹脂にどういう変化があり、それによってどういう効果が期待...

Almost 3D printing filament takes moisture from the atmosphere. It is well known moisture affects 3D printing, but little is known about what happens when filament is moistured. When moistured filamen...

射出成型などの成形加工において、樹脂原料の乾燥は基本中の基本です。3Dプリンタでも例外ではありません。フィラメントに水分があるといろんな悪影響がでてきます。十分な乾燥がされていない、乾燥にバラつきがある、などは造形不良の原因となります。フィラメントの乾燥は何に気を付けたらいいか、あまりこれといった考え方がありません。3つの視点から整理してみたいと思います。1.乾燥の方法水分はシリカゲルでとれる?樹...

FDM式の3Dプリンタで悩ましい問題のひとつが「反り」です。何時間もかけて途中までうまくいったのに、ベッドからぺりっとはがれて造形が台無しになったという経験は誰もがお持ちかと思います。対策はいくつも提案されていますが、そもそもなぜ反るのかということについては説明されているサイトをあまり見かけません。推測となりますが、数式などを使わずに、できるだけ簡単な言葉と図でFDMの反りのメカニズムについて考え...

市販されている導電性フィラメントは、多くが炭素系フィラーと樹脂の混合物でできています。炭素でできている物質はいろいろあります。鉛筆の芯は黒鉛で、黒鉛は電気を通すことをご存知の方もおられるかと思います。内部構造が関係しており、より結晶に近い構造をとっている方が電気が流れやすくなります。導電性フィラメントで使われる炭素はカーボンブラックが多いです。油を燃やした時に出るススと同じようなもので、これを工業...