樹脂の射出グレードと押出グレードの違いは何?

樹脂のデータシートを見ていると、射出用、押出用と書いてあることがあります。これらの違いは何なのでしょうか。例えば押出用の樹脂を射出成型で使うとどうなるのでしょうか。

 

ポリマーは多くのモノマーがつながってできている高分子です。ポリマーの分子量はモノマーがつながっている数が増えるほど大きくなり、分子量が大きくなるほど高分子の鎖の絡み合いが多くなります。ひもが無数にあって、これを引っ張って動かそうとする様子を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。長いひもだと絡んで動きにくいですが、短いひもだと動かしやすいことが想像できると思います。絡み合いが多い=分子量が大きくなると樹脂は流動しにくくなり、逆に絡み合いが少ない=分子量が小さいほど流動しやすくなります。

 

射出成形の場合、溶融樹脂を一気に金型に注入します。金型内部は複雑な形状で、分岐があったり流路が狭い箇所もあります。そのような中でも樹脂がスムーズに流れる必要があるため、分子量が低い=流動性が高い樹脂が用いられます。

 

一方、押出はフィルム、板物、チューブなどの製造に用いられ、厚みや径、断面形状など樹脂流れ方向、幅方向の均一性が重要視されることが多いです。押出後にすぐにダレるのは好ましくありません。製品によっては押出後に延伸などで調整をかけることもあり、溶融状態での粘度が低いと、ある箇所だけが部分的に伸びて寸法のバラツキが大きくなったりします。フリーの状態でも形状を維持してくれたり、引張った時に全体が均一に伸びてくれる特性が求められることが多く、分子量が高い=流動性が低い樹脂が使われることが多いです。

 

場合によっては押出用の流動性が低いグレードの樹脂を、温度を上げて射出成形で使用し、金型のキャビティを満たすのに必要な流動性を持たせて使うこともできます。樹脂の流動特性が最適には設計されていないということですので、温度条件や金型形状がマッチしていれば使いこなしできることがあります。

 

ただし、樹脂によって流動性の温度変化の仕方が異なりますのでこの点には注意する必要があります。ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂は温度を変えることで流動性を調整することは比較的容易です。ナイロンやPETなどの場合は温度に対する流動性変化が敏感である傾向があり、どの樹脂でもうまくいくとは限らない、ということは頭に入れておいたほうがいいかもしれません。