PLA樹脂原料の取り扱い、乾燥、再生に関する基礎知識

一般にPLA樹脂は成形での扱いが難しいと言われていますが、これは成形加工だけでなく、実は前準備など取り扱いにおいても同様です。PLA樹脂は大気から水分を容易に吸収します。気温にも非常に敏感です。他の樹脂よりも乾燥、保管、搬送などには特別に気を付ける必要があります。

 

PLA樹脂原料の取り扱い、乾燥について

原料メーカーが提示する特性に近い成形品を得るには、PLAが周囲の乾燥されていない空気に触れることを最小限に抑えることが重要になります。PLA樹脂は原料メーカー側で吸水率が400ppm以下になるまで乾燥し、アルミ袋にて密封して出荷されます。ただし一旦開封すると、現場の環境によってはわずか5分程度で元に戻ってしまうくらいの水分を吸収してしまい、せっかく行われた乾燥が台無しになってしまいます。そのためPLAは残らず使い切るか、残った材を保管する場合は防湿缶など必ず水分を通さない容器で保管する必要があります。

 

サイロでの保管は、常時乾燥している地域である場合、サイロが特別に設計されていて、搬入時にサイロに入る周囲の空気を処理できる十分な除湿乾燥機を備えている場合以外は使われません。PLAは成形加工前にできるだけ短い距離で搬送されることが好ましく、乾燥機から成形加工機への直接搬送が理想です。

 

PLAは溶融状態だと微量の水分が存在するだけでも加水分解します。加水分解によって分子量が低下し、機械的特性が低下します。その結果、例えば製品が脆くなったり、内部に気泡が発生したり、外観不良が発生したりといったことが起きます。PLAでは乾燥が不十分だと他の樹脂より顕著に特性に影響が出るということを理解しておく必要があります。原料メーカーは成形前にPLAを250ppm以下で乾燥させることを推奨していることが多いです。マージンを確保するために200ppm以下での管理が必要になることもありますし、厳しく特性を求められる場合は50ppm以下になる場合もあります。

 

単純には乾燥を強化すればいいのですが、必要以上の乾燥はコストに跳ね返ってきます。かといって不十分な乾燥だと不良品が発生しやすくなり、これもまた同様にコストがかかります。そのため、どの程度の水分量で管理するかを適切に見極めて条件設定、機器選定を行うことが必要になってきます。

 

PLA再生材を使うには

PETでもそうですが、原料メーカーから供給されるバージンのPLA樹脂は出荷時点で結晶化されているため、乾燥や成形加工前に結晶化させる必要はありません。ただし一旦樹脂が溶かされると結晶はなくなってしまい、非晶状態に戻ってしまいます。そのため、PLA再生材を使おうとして乾燥をかける場合、ガラス転移点(55℃)以上にしてそのまま加熱し続けると材料どおしがくっついてしまい、お菓子の「雷おこし」のような感じになって固まってしまうためうまくいきません。

 

一旦非晶になったPLAを乾燥させるには、常に攪拌しながら加熱を行う必要があります。バッチの場合は乾燥タンクに垂直方向のスクリューを備えた乾燥機であったり、連続処理の場合はベルトコンベアで搬送されながら加熱結晶化を行う装置が用いられます。特別な装置が必要になってきますので、少量の場合はバージン材と再生材を混ぜて乾燥するといったケースも多いようです。