栓流(プラグフロー、プラグ流れ:Plug flow)とは、管内断面で速度が一定、速度分布がフラットな流れのことです。円管内の壁面で完全に滑っていて、全体がそのままの形で一様に動いている流れが栓流です。栓流は隣接する流線と流線の間でせん断を伴わず、流体粒子が流動中に混ざることがありません。栓流は理論上で考えられる理想的な流れです。解析を容易にするための仮定として数式上で使われます。実験的には流れの上流に細かなメッシュを置いて人工的に作られることがあります。
この栓流はあまり自然界にはない流れです。一部粘性の高い溶岩が栓流に近い流れを示すことが知られています。
工業的には土管やタイルを作る時に使われる粘土の土練機などが出口近くで栓流になります。
粘土を押し出してタイルの形にする、土練機!!
よく流れを扱うときに、層流と乱流という言葉がでてきますが、栓流という言葉は聞いたことがない、という方は多いかと思います。横軸にせん断速度、縦軸にせん断応力をとったとき、一番左側に来るのが栓流です。
Types of Flow and Rheology Models of Drilling Mud
せん断速度は流線のずれの程度を示す言葉です。栓流は力を受けても流線のずれが発生せず、全体が滑って流動している領域ということになります。もう少し力を受けて流線にずれが起きだすと、隣接する流線との間で速度差が生じて速度分布が放物線状になります。これが層流です。層流は流れに速度差はありますが、流線が交差することはありません。もっとずれが増えると流れは不安定になり、最終的には流線が隣の流線を追い越したりして流線が蛇行する現象が起きます。これが乱流になります。
栓流は、実際には完全に速度分布がフラットということはなく、フラットと放物線の中間のような、弓なりの速度分布になっています。若干流線がずれを生じていながらも、主には壁面近くまで速度分布がフラットになって流動している状態です。
PETE 411 Drilling Engineering
この栓流ですが、樹脂溶融押出の分野でもたまに出てくることがあります。溶融状態の樹脂は、細管を通る時にはノズルの内壁によって強い応力を受けていますが、ノズル出口に到達すると内壁の拘束が解かれ、せん断で蓄積されていた弾性エネルギーが解放されます。その結果、径方向に膨れて元の細管の径よりも太くなります。この現象がダイスウェルです。樹脂はダイスウェルを起こして応力が解放された後は惰性で動きますが、このときの流れは栓流になります。栓流は流体にとってエネルギー損失がない楽な流れ方ということになります。
[PDF] Polymer Processing Extrusion Instabilities and Methods for their Elimination or Minimisation