PLAは結局生分解するのかしないのか - 正しい理解のために -

土
PLA樹脂でできた製品や造形品を実際に土に埋めて確かめてみたという方もいらっしゃるかと思います。Youtubeでもいくつかテストしてみたという動画がありますが、何年も埋めても目に見える変化が起こらなかったという内容が多いです。

 

PLAは確かに生分解性樹脂ですが、中でもかなり分解されにくい部類に入ります。PLAが自然環境中で分解されにくいのは、PLAを直接分解できる酵素が自然界には少ないからだと言われています。

 

PLAは下記リンクのように、わざわざ樹脂に分解酵素を添加してやらないと実際のところはなかなか分解しません。「ポリ乳酸は生分解性プラスチックの一つとして位置付けられていますが、残念ながら、コンポストという高温・多湿の特殊な環境下でしか分解は起こらず、一般の土壌、河川水、海水では全く分解しません。」とけっこうキツめの言葉で書かれています。
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20200730-1.html

 

要は、樹脂に酵素を加える、コンポストで処理するなど、樹脂になにかしら手を加えるか環境を整えないと、我々が一般にイメージするような速度では分解が起こらないということです。

 

中にはPLA製品を自然環境に残置すると、「強度が低下してボロボロに崩れるので分解が進みます」という紹介されている動画や記事もあり、これがPLAの生分解に対して個々人の理解の違いを生んでいる側面もあります。

 

注意しておきたいのは、ボロボロになるというプラスチック製品の形状崩壊と、ポリマーの鎖が切れて水と二酸化炭素に分解される生分解は、必ずしも同じ現象とは限らないということです。形状崩壊であれば一般的な石油系プラスチックでも起きます。たとえばポリプロピレン製の洗濯バサミやハンガーを屋外に出しっぱなしにしておくといずれ光劣化でボロボロになりますが、これと同じです。光劣化を起こして分子量が下がればボロボロに崩れて細かくはなりますが、生分解する分子量に届く前に風化して土に埋もれたり海に流されたりすることが多いため、実使用上はすべて生分解するところまで至りません。

 

時間がかかってもいずれは分解するのでいいのでは?という見方もありますが、ただでさえ温度が高く酵素も豊富な地表や土壌中でも分解が遅いわけですから、流出して海に流れ出てしまうと石油系プラと変わらなくなって延々環境中に残り続ける可能性があります。PLA製品の安易なポイ捨て、投棄は避けるべきかと思います。

 

PLAは分解しないのでけしからんという見方も一部にありますが、これも正しくない理解かもしれません。PLAにはバイオマスプラスチックという側面もあるのでCO2削減に寄与しますし、分離が難しいような生ごみネットやティーバッグ、コーヒーバッグなどで使えばそのままコンポストで堆肥化できます。時間がかかっても分解するので、地中深くで使われ、回収が難しい土壌改質用途にも向いています。プラスチックそのものが悪いのでなく、その用途や役割を終えた時の処理方法が問題なわけです。

 

「生分解」というなんとなく環境にいい言葉のイメージだけが独り歩きすることのないよう、製造側、販売側、消費者側、それぞれが正しく理解し、意識を向上させることが必要かと思います。

 

ヘッダー画像
https://pelacase.com/blogs/news/5-things-you-probably-didnt-know-about-compostable-plastics