ドライブギヤによるフィラメント変形の違い

どうもフィラメント送りと樹脂吐出の追従が悪くなってきているような傾向が見られたため、ドライブギヤを交換することにしました。使っているMeCreator2にはもともと真鍮の平歯のドライブギヤがついています。同じものを買ってもよかったのですが、平歯のものだとフィラメントをしっかりくわえ込まないため、また同じように吐出不良が発生する可能性があります。材質が真鍮で柔らかいために、清掃で何回か脱着するとイモネジを締めこんだときにネジがなめってしまい、きちんとステッピングモーターに固定できなくなる問題もありました。同じようなトラブルを起こしたくなかったため、この機に溝が切ってあるタイプのものに切り替えることにしました。小嶋技研様のドライブギヤが希望の形状で非常に評判も良かったため、こちらを購入して使用させていただくことにしました。

 

ドライブギアの交換

ドライブギヤ 真鍮平歯のもの
もともとついていた真鍮平歯のドライブギヤ。3Dプリントが終わった直後で未清掃のもの。フィラメントと点でしか接触せず、うまく力が掛からないためかフィラメントの削れた粉が多数付着しています。こういった粉を巻き込むことでも吐出不良になる可能性がありそうです。他にも過去にガラス繊維入りなど硬いフィラメントを扱ったためだと思われますが、歯が一部変形してしまっているのと、繰り返し清掃で脱着したためにイモネジを締めこんだときにネジがなめってしまい、きつく固定ができていない状態。

 

小嶋技研様MK7ドライブギア ピッチ0.5mm 組み付け時
小嶋技研様MK7ドライブギア ピッチ0.5mm。非常にきれいな仕上がりです。

 

小嶋技研様MK7ドライブギア ピッチ0.5mm 上から
丸溝に刃が切ってあるので、フィラメント全体をくわえ込んで無理なく力がかかります。

 

ドライブギヤ通過後のフィラメント形状

なぜ真鍮平歯のドライブロールだとうまくいかないのかが気になったため、実際に3Dプリントした後のフィラメントを抜き取り、ドライブギヤ通過後のフィラメント形状を確認してみることにしました。使ったのは自作の木粉52%PPフィラメント。フレキシブルほどではないですが、柔らかい部類だと思います。

 


フィラメントの方向を整理するために、ドライブギヤで押さえている方向をV方向、フリーになっている方向をH方向と呼ぶことにします。

 

フィラメントH方向


上が小嶋技研様ドライブギア、下が真鍮平歯のドライブギヤです。真鍮平歯のほうが歯の跡がきつめに出ています。接圧が真鍮平歯の方が強くなってしまうために変形してしまうようです。

 

フィラメントV方向


おなじく上が小嶋技研様ドライブギア、下が真鍮平歯のドライブギヤです。小嶋技研様ドライブギアはきれいにフィラメントが弓なりになっていますが、真鍮平歯の方はいびつにS字になっています。同様に真鍮平歯の方は接圧が強いのと、ノズル中心に対してフィラメントの中心がずれた形で押し込んでいるためにこのような形になっているようです。

 

フィラメント径

 

ドライブ
ロール
通過前(d1)
ドライブ
ロール
通過後(d2)
変形量
(d2-d1)
真鍮平歯
ドライブ
ギヤ
H方向 1.759 1.846 0.087
V方向 1.757 1.718 -0.039
小嶋技研様
ドライブ
ギヤ
H方向 1.770 1.776 -0.006
V方向 1.746 1.716 -0.030

単位:mm
3Dプリンタ:MeCreator2
フィラメント:木粉52%PP(自作)

 

フィラメント径をドライブロール通過前後でマイクロメーターで測定し、その差を変形量として出してみました。H方向に大きく差があります。真鍮平歯ドライブギヤは大きく変形してフィラメントが扁平した状態でノズルに供給されており、これが抵抗になっている可能性が考えられます。一方で小嶋技研様ドライブギヤはきちんとフィラメントを抱き込んで力をかけているためか、V方向は若干変形があるものの、H方向は大きく変形はありませんでした。一般のPLAやABSでもドライブギヤで同じような変形が起こるかはわかりませんが、ドライブギヤ変更によって良好な方向になっていることは間違いないようです。